二次創作小説
添い寝
「俺はドクトリーヌに頼んでたぞ。」
無邪気な顔でそう言うチョッパーにゾロとサンジは苦笑った。
「そ、そっかぁ。チョッパー。」
サンジが苦し紛れにそう同意すると、続けてゾロも事を穏便に済まそうと口を開く。
「わ、分かった。まぁ今は婆さんの代わりにナミやロビンがいるだろ。もしもの時はあいつらを頼れよ。」
「そうだな!」
「じ、じゃあ、もう遅いしさ、ほら。部屋戻って寝ろよ。」
「うん、そうする。それじゃあお休み、ゾロ、サンジ。」
「「おやすみー…。」」
閉まったキッチンの扉を確認して、サンジがゾロを睨む。
「おい。だれが添い寝してもらってる、だよ。」
「しゃあねぇだろうが。あぁ言うしか。」
「何が添い寝だ。素っ裸でかよ。」
言いながらさっきまで横になっていた場所まで戻ってくるサンジがテーブルの上の煙草に手を伸ばす。
あれを取り出せば今夜は終わりだと言うサンジの無言の印だ。
ゾロは小さな舌打ちと共にサンジの手から真新しい煙草を引き抜いた。
「何すんだよ!」
すかさず飛んで来た罵言に耳を塞いで煙草に伸びた腕を掴んで引き倒した。
「足りねぇ。もっかいだ。」
「巫山戯んな。今日はもう終わりだ。」
暴れる身体を押さえ付けて、のしかかり同然で口を塞ぐ。
「サンジ。」
耳元に響いた名にサンジは自分が絆されていくのが分かった。
「しゃぁねぇな。」
添い寝してやるよ、と蕩けた声が合わせた唇の間から漏れ、ゾロも笑って目を閉じた。
「お、チョッパー。どうしたんだ?」
チョッパーが男部屋に戻ると眠気眼半分のルフィと鉢合わせた。
「喉が乾いたからキッチンにね。ルフィこそどうしたの?」
自然落ちてくる瞼を擦りながらチョッパーはハンモックへと戻る。ルフィもハンモックの上にこそいるものの上半身を起こして
眠る気配はない。
「なーんかなぁ。眠れねぇんだよなぁ。」
「今日は一日中暇だったからな。昼間寝すぎたんじゃないのか?」
「そっかなー…。」
言いながら府に落ちないルフィを見て、チョッパーはそうだ、と呟く。
「ルフィも誰かに添い寝してもらうといいぞ。サンジもゾロに…添い寝…。」
途切れた声に、ルフィがチョッパーのハンモックを覗き込むと、既に眠りの中に落ちてしまったチョッパーがいた。
暗闇の中でルフィは考える。
「添い寝か。」
「それじゃあ、ロビン。見張りお願いね。」
大きな欠伸を一つ、ナミがベッドに潜りこむ。猫のような姿にロビンはくすりと笑って
「えぇ、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
女部屋を出て見張り台へ向かう。マストを登る寸前、ロビンは女部屋へ繋がる船内扉を抜ける見なれた黒髪を見つけた。
「あら。」
一人になった部屋で、ナミはすぐに眠りへと落ちて行く。気候穏やかな一日だったため、この際にと蜜柑畑の手入れに力を入れす
ぎたようだ。今日は手伝いを買って出るサンジも保存食の作り置きで忙しかったため、実質一人で働いていたようなものだ。
自然と閉じて行く思考に任せて眠りにつこうとした時、誰かが女部屋の戸を無遠慮に叩いた。
「ナミ!ナミ!」
聞きなれた声に、若干不機嫌まじりに身体を起こす。
「ルフィ?」
「ナミ!いるんだろ、ナミ!」
「…もー。何なのよ。」
ナミは重い身体を起こして扉を開く。その先には予想通りの人物が立っている。
「添い寝しにきた!」
挙句これだ。
「は?添い寝?頼んでないわよ、そんなの。」
怪訝なナミを無視してルフィは女部屋に入りこみ、ナミのベッドに持って来た自分の枕を並べる。
ルフィは隣りの空のベッドを見て首を傾げる。
「そう言えば、ロビンは?」
「見張りよ、見張り。」
「そうか、見張りか。」
「それより、添い寝って何よ。」
「添い寝は添い寝だ。」
「だからそんなの頼んでないってば。」
「違うぞ。俺が添い寝したいんだ。」
ナミは自分のベッドに潜り込むルフィを見て頭を抱えた。
それは添い寝したいと言うよりしてもらいたいんだろう。
「…仕方ないわね。」
言っても聞きはしないだろう。ナミも諦めてルフィの隣に横になった。
「ナミ、添い寝だぞ。」
「…分かってるわよ。」
僅かに空いた隙間に不満そうな声を聞いて、ナミは赤らんだ顔を暗闇の中に誤魔化した。
子供のようなのに身体を沿わせると自分を包んでしまう身体に、結局自分がルフィに添い寝されているようだ。
「おやすみ、ナミ。」
どうせつまらないことで眠れなくなったのだ。
「おやすみ。」
答えて直ぐに自分の背に回った太い腕に安堵しながら、今度こそナミは深い眠りの中に落ちて行った。
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